金属技術
金属技術に要する技巧は彼らをその道の専門家に仕立て上げたが、彼らは専門職人であるためにひとつの社会に縛られるというようなことはなかった。
そして何千年もの間に、幾世代にもわたって、去就の定まらない金工職人は、一見したところ、独立独歩の興味深い姿をして、利益が得られるところならどこにでも腰をおろして仕事にはげみ、彼らの製品だけでなく様々に情報をも広めでした。
その腕前は彼のパスポートです。
自分に必要な鉱石を見つけたら、どこにでも小さな炉を築いて金属を精錬した。
彼は古代世界の至るところにスラッグ〔鉱津〕の山や、ときには炉跡の形でその足跡を残しでした。
そうしたロートアイアンなどの金属の作業場には、うまく精錬できずに終わったときにでるスポンジ状の黒い鉱塊が今でも発見される。
彼によく似た人たちは、今日でもヨーロッパの片田舎で、ポットを修繕する巡回の鋳かけ屋のなかに、あるいはまた近東の昔ながらの農村で、ほこりっぽい広場に屋台を広げた放浪の鍛冶屋のなかに見ることができます。
彼らは地面に座り込み、原始的な炉で石炭が適当な温度になるまでふいごを動かし、斧やナイフやのみなどと同じようなものを鋳造しています。
その様子は、4000年かそれ以上も前に彼らの先祖が行っていたのと同じ状況や環境を想い起こさせる。
今日では、こうした初期の放浪していた鍛冶屋の作業がどのようなものだったかを想像するのは、まずもってむずかしい。
彼らの最初の発見はすべて無から生み出されたもので、彼らを導く知識や指針は何もなく、また支えとなるべき先達もいなかった。
このような状況は、生活の基礎を過去の長い文化の蓄積の上に置き、しかも先人の経験や記録によって生きている現在のわたしたちには思いもよらないことです。